停止

止まってしまった。完全に。
24歳の時は、仕事に対してどうしようどうしようって不安で、いっそ辞めるべきなのか、かといってこれだという仕事も思いつかなくって、朝が来るのが不安で。無駄に雑誌を読んだり携帯をいじったりして夜が過ぎるのを待っていた。私はちゃんと考えて今の会社に就職したのに、実は考えた「つもり」だったという事がよくわかった。
昔、就活で面接試験の時、周りの子がこの業界を志望していないのに単に面接の練習として来ていることにすごく腹を立てていた。私はこんなにもこの仕事をしたいのに!って。けれど、私にそんなこと思う資格なかった。
25歳になって、確実に時間は流れて、なぜか今は不安は少なくなった。でも、止まってる。
今思うのは、不安で不安で仕方がない時の方が、今の止まっている状態よりは良いのではないかということ。このまま何も感じず流されていくより、不安で苦しくて孤独でも、前にも後ろにも進んでいないよりかはよっぽどいいんじゃないのかな。
周りの仲の良い友達はほとんど転職して、最初に就職した職場でずっと勤めているのは私だけだった。すごいなぁってみんな言うけど、全然すごくない。私はある時気付いてしまった。私は一度決めたことをやり抜いているんじゃなくて、ただただ、辞める勇気がなかっただけだっていうことに。気付きたくなかったけど、わかってしまったことを分からない振りするなんて出来ない。


この前、前の席に座っている先輩が、私の大学のゼミの先生に会ったと言っていた。私の出た大学は、よくうちの会社のケータリングサービスを使ってくれるのだ。「先生がみなみさん元気にしてる?って心配してたで。」と先輩が言うとおり、卒業して4年も経つ生徒の事をいまだに気にかけてくれる優しい先生だ。ふと先輩が「先生が、みなみさんは不器用やからなぁって。」と言った。私は少しショックを受けて「えー、そりゃあ不器用ですけど…!」確かに細かい作業とか苦手やし、当たってるけどでも…といじけていたら、「みなみさんは真面目すぎて不器用だからって。」と先輩。その言葉を聞いたら、先生のあったかい気持ちとか、笑ってる顔とか思い出して泣きそうになった。しばらく黙った後、先生の言葉聞いてちょっと泣きそうになりました、って言ったら先輩は「うそ。」と少し笑いながら言って、さほど興味がなさそうにすぐ仕事をし始めた。私は泣きそうになるのをがまんした。仕事中だから。